交通事故で全損、買い替えで損したくない|提示額を上げるコツ
目次
「保険会社が出してきた全損の金額では、同じような車に買い替えられない…」
「もらい事故なのに、なぜこちらが損をしなければならないの?」
そんなふうに感じていませんか。
交通事故で車が全損になると、保険会社はまず時価額をもとにした金額を提示します。その金額は買い替えに必要な費用より低くなりやすく、納得できないまま示談を迫られる被害者は少なくありません。
全損の提示額は、時価額の根拠を確かめ、正しい手順で交渉すれば、増額できる場合があります。提示された金額をそのまま受け入れる前に、請求できる範囲を知るだけで、損を防ぐことが可能です。
本記事では、交通事故の全損で買い替え費用を請求できる範囲から、提示額を上げるコツや車両保険の使い方までを解説します。
読み終えるころには、全損の買い替えで損をしないために何をすればよいかが分かるでしょう。
交通事故で全損になっても買い替え費用は相手に請求できる

交通事故で車が全損になった場合、買い替えにかかる費用は相手側へ請求できます。
請求できるのは新車の全額ではなく、事故時点の車の価値です。
もらい事故なら加害者に請求できる
過失が一切ないもらい事故では、全損による買い替え費用を加害者側へ請求できます。自分に落ち度がないため、車の時価額と買い替え諸費用を、相手の対物賠償保険から受け取れます。
被害者にも過失がある場合は、過失割合に応じて請求できる金額が減る点に注意が必要です。たとえば過失割合が2割あると、認められた損害額から2割が差し引かれた金額の受け取りになります。
最初に確認したいのは、自分の過失割合です。
買い替えない場合でも請求できる
全損と判断されれば、実際に車を買い替えていなくても買い替え費用を請求できます。損害賠償は事故で失われた車の価値を補う仕組みであり、買い替えの有無で金額は変わりません。
そのため、しばらく買い替えを保留していても、請求できる権利がなくなるわけではありません。修理して乗り続ける場合でも、経済的全損なら時価額と諸費用を上限に賠償を受けられます。
買い替えの予定が決まっていなくても、請求内容を早めに確認しておくと安心につながります。
全損とは?物理的全損と経済的全損の違い

全損とは、車が事故で元の状態に戻せない、または修理費が車の価値を上回る状態です。
物理的全損と経済的全損の2種類があり、どちらも修理費は賠償の基準になりません。
2つの違いは、次のとおりです。
| 種類 | どんな状態か | 賠償の基準 |
| 物理的全損 | 損傷が激しく修理できない | 時価額+買い替え諸費用 |
| 経済的全損 | 修理費が時価額を超える | 時価額+買い替え諸費用(修理費の差額は対象外) |
どちらの場合も、受け取りの基準は事故時点の時価額です。
物理的全損は修理ができない状態
物理的全損とは、車の損傷が激しく、技術的に修理できない状態を指します。車体の骨格が大きく歪んだり、水没や火災で車が原形をとどめないケースです。
この状態では修理という選択肢がないため、買い替えを前提に賠償額が決まります。受け取れるのは事故時点の時価額と買い替え諸費用で、事故前と同等の車を用意する費用が目安です。
物理的全損は損傷が明確なため、全損かどうかで保険会社ともめにくい傾向があります。
経済的全損は修理費が時価額を超える状態
経済的全損とは、修理は可能でも、修理費が車の時価額を超えてしまう状態です。たとえば時価額が50万円の車に80万円の修理費がかかる場合、経済的全損と判断されます。
このとき、時価額を超える修理費(差額の30万円)は原則として受け取れません。買い替え諸費用は、これとは別に請求できます。年式が古い車ほど時価額が低く、少しの損傷でも経済的全損になりやすい点に注意が必要です。
修理して乗りたくても全損扱いになり、損をしたと感じやすいのがこのケースです。
全損で請求できる買い替え費用の内訳

全損で請求できる買い替え費用は、車そのものの時価額と、買い替えにかかる諸費用の合計です。
新車の購入価格をそのまま請求できるわけではありません。
買い替え費用は時価額と諸費用の合計
全損の買い替え費用は、事故時点の車の時価額に、買い替え諸費用を加えた金額です。時価額とは、事故に遭った車と同じ車種・年式・走行距離の中古車を、市場で買い直す価格を指します。
保険会社は中古車の流通価格をまとめた資料などをもとに、この時価額を算定します。新車価格や購入時の金額ではなく、事故直前の中古車としての価値が基準です。
そのため、同じ車種でも年式や走行距離によって受け取れる金額は変わります。
請求できる買い替え諸費用の具体例
買い替え諸費用の相場は、数万円から多くても10万円程度です。
請求できる費用と、原則として認められない費用は次のとおりです。
| 区分 | 具体例 |
| 請求できる買い替え諸費用 | 登録手続き費用・車庫証明手数料・廃車費用・納車費用 |
| 原則として請求できない費用 | 新車購入分の自動車税・ローンの金利 |
含まれる費用と含まれない費用を分けて把握すると、提示額の妥当性を判断しやすくなります。
参照:船橋シーアクト法律事務所「全損で請求できる買い替え諸費用とその相場」
全損の買い替えで損をしないための対処法

全損の提示額は時価額を低めに見積もられやすく、そのまま受け入れると損をする場合があります。
中古車相場との差によっては、受け取れる金額が数十万円変わることもあります。
提示額をうのみにせず根拠を確かめ、必要に応じて専門家の力を借りると、増額につながるでしょう。
時価額の根拠と中古車相場を確認する
全損の提示額を見直すときは、次の順で進めると効果的です。
- 算定根拠を確認する
どの資料をもとに、どんな条件で時価額を出したのかを保険会社に尋ねる
- 中古車相場を調べる
同じ車種・年式・走行距離の販売価格を中古車情報サイトで集める
- 相場との差を示す
市場価格が提示額より高ければ、その資料を根拠に増額を交渉する
複数の販売価格を集めておくと、時価額の見直しを求めるときの説得力が高まります。
弁護士への相談で増額を目指す
自分での交渉が難しいと感じたら、交通事故に詳しい弁護士へ相談する方法があります。弁護士は過去の裁判例や中古車相場をもとに、適正な時価額と諸費用を主張します。
保険会社は弁護士が入ると裁判を見据えた対応に切り替えるため、提示額が上がることも珍しくありません。自分の自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、費用の負担を抑えて依頼できます。
まずは特約の有無を確認し、無料相談で見通しを聞くところから始めると安心です。
全損時に使える車両保険と特約

全損の賠償だけでは買い替え資金が足りないときは、自分の車両保険や特約が助けになります。
相手からの賠償と組み合わせれば、買い替えの負担を軽くできるでしょう。
車両保険で買い替え資金を補う
自分が加入する車両保険を使えば、契約した保険金額を上限に買い替え資金を補えます。もらい事故で相手から十分な賠償を受けられない場合の備えになります。
車両保険を使うと翌年度の等級が3等級下がり、保険料が上がる点には注意が必要です。受け取れる保険金と、値上がりする保険料を比べて、使うかどうかを判断します。
全損時に受け取った保険金の分だけ、相手への請求額は差し引かれる仕組みです。
参照:SBI損保インズウェブ「車両保険で全損車は買い替えられる?」
対物超過特約で差額を補う
加害者が対物超過特約に加入していれば、時価額を超えた分の差額を補える場合があります。この特約が使えるのは、修理費が時価額を上回る経済的全損のときです。
補償の上限は50万円程度に設定されていることが多く、契約によっては無制限の場合もあります。利用するかどうかは加害者側の判断となり、被害者から強制はできません。
相手の保険内容によっては差額を補えるため、示談前に特約の有無を確認しておくと安心です。
参照:よつば総合法律事務所「車の修理代が時価を超える場合(全損)の正しい対応方法」
よくある質問
Q.もらい事故で全損になったら泣き寝入りするしかないのでしょうか?
泣き寝入りする必要はありません。時価額の根拠を確認し、中古車相場を示して交渉すれば、提示額が上がる場合があります。自分での交渉が難しいときは、弁護士への相談も選択肢になります。
Q.全損の買い替え諸費用の相場はどのくらいですか?
買い替え諸費用の相場は、数万円から多くても10万円程度が目安です。登録費用や車庫証明手数料などが含まれ、新車分の税金やローン金利は原則として認められません。
Q.保険会社の全損の提示額が安すぎる場合はどうすれば上がりますか?
まず時価額の算定根拠を保険会社に尋ねます。そのうえで同じ車種・年式の中古車価格を集め、相場との差を示して交渉します。弁護士費用特約があれば、弁護士に依頼して増額を目指す方法もあるでしょう。
まとめ|全損の提示額は見直せば損を防げる

交通事故で車が全損になっても、買い替え費用は相手に請求できます。受け取れるのは事故時点の時価額と買い替え諸費用で、相場は数万円から10万円程度が目安です。
保険会社の提示額は時価額を低めに見積もられやすく、そのまま受け入れると損をする場合があります。時価額の根拠を確認し、中古車相場を集めて交渉すれば、増額につながることもあります。
自分だけで対応するのが難しいときは、弁護士費用特約を使って専門家に相談する方法から始めてみましょう。