交通事故で車両保険の金額を上げる方法|全損提示額に不満な方へ
目次
「保険会社に全損と言われたけれど、この金額では同じ車を買い直せない」
提示額への不満に加えて、「本当に妥当なのか、もっと上げられないのか」と迷う方は少なくありません。
交通事故で車が全損になると、受け取れる金額は原則として事故時点の「時価額」が上限になります。この時価額は保険会社が中古車の価格表を基準に決めるため、実際の市場価格より低く出やすいのが実情です。
全損の賠償額は、交渉しだいでまだ上げられます。市場価格の資料をそろえて正しく請求すれば、受け取る金額を上げることは可能です。
本記事では、交通事故で車両保険の金額を上げる方法を、仕組みから交渉の注意点まで解説します。
読み終えるころには、最初の提示額に流されず、何をすべきかが見えてくるでしょう。
交通事故で車両保険から受け取れる金額の決まり方

交通事故で受け取れる金額は、次の2つの金額をもとに決まります。
- 車両保険金額
- 時価額
まずは、この2つの違いを押さえておきましょう。
車両保険金額と時価額の違い
車両保険金額とは、車両保険で支払われる保険金の上限額のことです。契約時に、車の年式や型式に応じて決めます。
時価額は、事故時点での車の価値です。新規登録から1年を過ぎた車では、前年の車両保険金額の90%程度が目安とされます。
参照:チューリッヒ「車両保険金額の目安はいくら?決め方や計算方法」
受け取れる金額は時価額が上限になる
全損時に受け取れる金額は、車両保険金額の範囲内で、事故時点の時価額が上限になります。
たとえ修理費が高くても、車の価値を超える部分までは受け取れません。
全損とは?受け取る金額が低くなりやすい理由

全損とは、車の修理ができない、または修理費が時価額を上回る状態を指します。
全損と判定されると、時価額を超える金額は受け取れなくなります。
物理的全損と経済的全損の違い
全損には2つの種類があります。修理そのものができない状態が「物理的全損」です。
修理はできても、修理費が車の時価額を超えてしまう状態は「経済的全損」と言います。
多くの全損は、この経済的全損です。保険会社は「同等の車に買い替えれば足りる」と考え、実際の修理費ではなく、より低い時価額を支払いの基準にします。
時価額の決め方と低くなりやすい理由
保険会社は時価額を見積もるとき、中古車の標準価格をまとめた業界向けの価格表を使います。この価格表(通称レッドブック)は、実際の取引価格より低い傾向があります。
販売開始から10年以上たった車は、時価額を新車価格の10%程度と見られやすい点にも注意が必要です。
参照:グーネット「全損した事故車にはどのくらいの保険金が下りる?」
全損で車両保険の金額を上げる具体的な方法

全損の提示額は、根拠資料をそろえて反論すれば上げられる可能性があります。
金額を上げる具体的な方法は、主に次の3つです。
- 中古車の市場価格で反論する
- 買い替え諸費用まで請求する
- 上乗せできる特約を確認する
どれも、時価額そのものと請求できる費用を見直す取り組みです。
中古車の市場価格で反論する
特に効果的なのが、実際の中古車市場価格を示して反論する方法です。
同じ車種・年式・走行距離の中古車を検索サイトで調べ、その見積書を保険会社へ示して、時価額の計算し直しを求めましょう。
買い替え諸費用まで請求する
全損時は、車両本体の時価額だけでなく、買い替えにかかる諸費用も損害として請求できます。日弁連交通事故相談センターによると、次の費用が賠償の対象と認められています。
- 登録費用
- 車庫証明費用
- 廃車の法定手数料
自分から項目を挙げて請求すれば、受け取る金額の上積みが期待できます。
参照:日弁連交通事故相談センター「修理費が車の時価を超えるとき(経済的全損)の賠償額」
上乗せできる特約を確認する
契約している特約次第で、時価額を超える金額を受け取れる場合があります。代表的なのが「車両全損時諸費用特約」や「新車特約」で、名称や条件は保険会社によって異なります。
まずは自分の保険証券を確認し、上乗せできる特約がないかをチェックしましょう。
過失割合と対物賠償が受取金額に与える影響

相手のいる事故では、受け取れる金額が過失割合によって変わります。
相手側から支払われる賠償金は、自分の過失分だけ減る仕組みです。
過失割合の分だけ賠償金は減る
相手の対物賠償保険から受け取れる金額は、自分の過失割合の分だけ差し引かれます。
たとえば時価額100万円の全損でも、自分の過失が3割あれば、相手からの賠償は70万円に減ります。
過失割合に納得できないときは交渉できる
過失割合は、事故の状況をもとに保険会社どうしが決めます。示された割合に納得できないときは、交渉できないか確認しましょう。
ドライブレコーダーの映像などで自分の過失が軽くなれば、受け取れる金額が増えることもあります。
車両保険を使うと保険料が上がる仕組みと金額の目安

全損で車両保険を使うと、翌年から等級が下がり保険料が上がります。
受け取る金額を上げても、その後の保険料増加とのバランスが大切です。
全損での使用は3等級ダウンが基本
車両保険を使うと、翌年の等級は基本的に3等級下がります。全損事故も、原則として3等級ダウン事故です。
盗難やいたずら、水没など偶然に起きた事故は、1等級ダウンで済みます。
保険料は4年間でいくら上がるか
保険料の増加額は、下がる等級によって差があります。
| 等級の変化 | 現在の年間保険料 | 4年間の累計増加額 |
| 20等級→17等級 | 40,000円 | 約53,000円 |
| 12等級→11等級(1等級) | 50,000円 | 約37,000円 |
| 7等級→4等級 | 79,000円 | 約153,000円 |
全損で受け取る金額を、この保険料増加が上回らないか、必ず確認しておきましょう。
参照:インズウェブ「車両保険を使うと保険料はどれだけ高くなる?」
全損の賠償額を上げる交渉で失敗しない注意点

全損の金額を上げるには、交渉の進め方が結果を左右します。
最初の提示額を、そのまま受け入れないことが大切です。
最初の提示額を鵜呑みにしない
保険会社が最初に示す時価額は、あくまで1つの基準にすぎません。
提示額に納得できないときは、その場で署名せず、根拠となる計算資料の開示を求めましょう。
交渉が難しいときの選択肢
全損の賠償額交渉に詳しい専門家へ相談すると、自分だけで進めるより金額が上がる可能性が高まります。
ひとりで抱え込まず、提示額に疑問があれば早めに相談先を検討しましょう。
よくある質問
Q.全損でも車両保険の金額を上げることはできますか?
はい、可能です。市場価格の資料を示して時価額の計算し直しを求めたり、買い替え諸費用を請求したりして、金額を上げられる場合があります。
Q.時価額はどうやって調べればよいのでしょうか?
同じ車種・年式・走行距離の中古車を、検索サイトで探す方法が手軽です。複数の販売価格を集めると、実勢に近い根拠資料になります。
Q.提示額に納得できないとき、まず何をすべきですか?
その場で合意せず、計算の根拠資料を保険会社に求めましょう。あわせて市場価格を調べておくと、交渉の準備になります。
まとめ|全損の提示額はあきらめず金額を上げる交渉を

交通事故で車が全損になると、受け取れる金額は時価額が上限になります。この時価額は業界向けの価格表を基準とするため、実勢より低く出やすい点が問題です。
中古車の市場価格で反論し、買い替え諸費用や特約まで確認すれば、金額を上げられることもあります。
ひとりでの交渉が難しいときは、早めに専門家へ相談することで、納得できる賠償額に近づけるでしょう。